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― 五年前 ―
「…うん、準備できた。そろそろ出るつもりだよ」
『おっけ。じゃあ例の場所で』
プツッと電話が切れ、携帯をジーンズのポケットにしまう。
腕時計を確認すると、夜の十一時を回ったところだった。
リュックサックを背負い、親に見つからない様に忍び足で玄関を出る。三月とはいえ、まだ肌寒い。
「さて…と、少し急がないと…」
門前のマウンテンバイクに跨り、力の限り漕ぐ。目的地は…ここから二十分程の星座山だ。
まあ、山といってもそこまで大きいわけでは無い。でも、天体観測の名所で、ここから見える星は絶景だ。
「遅えぞ、玲一!」
頂上に着いた俺を迎えたのは有人。こちらに走り寄っては笑顔でヘッドロックを決めてくる。
「ごめん。荷物まとめるのに手間取っちゃって…」
「全く…。…まあ早く行こうぜ! 皆あっちで待ってるからさ」
全力で走って行く有人の後をついてチャリを漕ぐ。先には、立華、恵、そして慶介がいた。皆、俺の幼馴染だ。
「玲一、遅いじゃない。言いだしっぺが三十分以上遅刻って…」
「本当に…。朝になったらもう卒業式なのよ!」
プンスカと仁王立ちの立華、口を尖がらせる恵の二人が、そろって詰め寄ってくる。
「まあまあ、思い出づくりなんだし、楽しくいこうよ」
立華、恵の不満口を遮り、慶介が地面に寝転がりながら笑顔で言う。
それにならい、俺も隣にゆっくりと 寝転がる。同じく有人、立華、恵も。
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