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 タツオはものめずらしそうについてくるジョージに背中越しにいった。 「うちはボロ家だけど、絶対におふくろにはそんなこというなよ」  ジョージはおもしろがるような表情でいった。 「うちも没落貴族だってことを忘れてるんじゃないか。ぼくはただこの下町の風情(ふぜい)がおもしろいと思ってるだけだよ。ほら、あそこ」  夕顔のつるが背を伸ばす鉢植えのとなりには、黒塗りの甕(かめ)がおいてあった。鮮やかな緑の水草のあいだを、夢のように赤い金魚がすいすいと泳いでいる。 「こんな街並みはエウロペにはないから、逆にものすごく新鮮だしカッコいいよ。できるなら、ぼくもこんな純日乃元風の街に住んでみたいな」  長屋の軒先(のきさき)では風鈴が風に揺れ、涼しげに澄んだ音を響かせていた。打ち水が目に冷ややかだ。
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