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漆を溶かしたような闇色の髪は短いながらも一括りにしており平素とは異なる印象を抱かせる。
土留め色の甚平に身を包んだ紅鸞の背には黄色の文字で「楽」と書かれていた。
その衣装を初めて目にしたときはなんとも紅鸞らしいと、苦笑を覚えたのは記憶に新しい。
「銀瑤くん 寂しいんだねぇ そうだよねぇ あんなにラブラブだったもんねー」
「そうそう シェアトちゃんに減らず口叩かなきゃいけないくらい寂しいんだよ 銀瑤くんは」
うんうんと何を納得したのか銀瑤には理解不能だが紅鸞には理解出来たようで、シェアトとともに腐った話に花を咲かせている。
どうにかしてこのふたりの口を綴じてやりたい銀瑤はそろそろ実力行使に出ようか本気で思案していると、ふいに中性的な声音が聴こえた。
「銀瑤さん 顔に出ていますよ」
「扇明殿」
その形よい口許を笑ませて佇んでいたのは黎 扇明だ。
藍に白い桔梗の柄の入った浴衣を身に纏い、胸元からは迷彩柄のTシャツが見えた。
「……あのふたりの口をどう綴じようかと思案していたところでして」
「………お気持ちは御察し致しますが不毛かと」
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