ゴキブリ野郎は走り回る。

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俺の一日は、ほとんどが公園で始まり公園で終わる。浮浪者というわけじゃないしいが家に居場所がないのだ。働き口もなく、収入もない俺ははっきり言って穀潰しでしかない。 役立たずの穀潰し。飯だけ食らうろくでなし、逃げ足だけは早くでどうしようもない怠け者。俺が今までさんざん、言われてきた罵倒を集めてみるとこんな感じだ。否定はしないし、事実だと思う。まるでゴキブリのようだと思う。 世の中というのは出来損ないのように見えてよく出来ている。一部の人間だけが特別に有能で、それ以外はことごとく無能で、いつだって特をするのは有能な人間だ。無能な人間を使い潰しにして美味しいところだけをもっていく。 努力すればなんとでもなるとは言うけれど、どこにだっていくら努力してもそれが実らない奴が居る。 下には下がいるのだと誰もがわからせたいのだと卑屈な思考を巡らせながら公園から出て道を歩く。と、そのとき、俺の真横をトラックがものすごいスピードで走り抜けていった。俺は片目をつぶってその光景を見つめていると、そこから俺をゴキブリ、ゴキブリと連呼した小説家もどきがやってくる。俺は苦笑い混じりに会釈して、彼女も俺を見ると、苦笑いし会釈した。 お互いにダメ人間なせいか、妙に波長があった。この街で仲良しなのは彼女だけだ。ああ、酒でも持ってこないかなとか思う。 てくてくと小説家もどきと分かれて、道を歩く、その道すがら浮き輪を抱えた小学生とすれ違ったが、こちらにを気にした様子もなく立ち去っていく。俺も用もないしでそのまま無視をして歩いていくと、目を疑う光景が広がっていた。 「なんだこりゃ、トラックがひっくり返ってるじゃねーか」 そのトラックはさっき見た猛スピードで走り抜けていったトラックだった。俺は驚きながらも運転手の安否を確かめなくてはならない、携帯電話は持っていないが通りかかってそのまま放置なんて後味が悪すぎる。ひっくり返ったトラックの窓ガラスは粉々に砕けてしまって事故のひどさが伺える。 「あん?」 と、俺はトラックを覗き込むが、そこには運転手の姿はどこにもない、もぬけの殻だ。どころか、血痕の一つもない。これだけの事故ならガラスで傷つけるだろうし、運転手が自力で抜け出すには難しい。まるで最初から誰もいなかったようにもぬけの殻。 おかしなこともあるものだと思いながら、近所の住人に声をかけて
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