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俺は自分の運を信じ、左から二番目の道を進んだ。先程の落とし穴のせいで、思う様に足が前に出ない。ゆっくりと時間を掛けて道を進んで行くと、いつの間にか大きなドーム状の空間に入っていた。
その空間の真ん中には地割れしたような幅の広い穴があいており、こちら側の崖と、向こう側の崖を繋ぐ20m程の木製の橋が架かっていた。
崖の目の前まで歩み寄ると、その穴を見下ろした。
一体どれくらいの深さなのか、予想もつかない程の大きな穴だ。
向こう側へ渡る唯一の橋は、見るからに朽ちていて、今にも崩れ落ちそうだ。
「狸吉様、参りましょう。」
「小僧、お前が先に行け。」
「ご冗談を。」
俺は観念するように、足で強度を確かめながら橋を渡った。一歩一歩踏み締める度に、ミシミシと嫌な音が聞こえてくる。
残り数mというところで、橋は真ん中から真っ二つに引き裂かれた。
「うわぁぁぁ!」俺は全速力で走り、残りの距離を飛び越える様にジャンプし、向こう側の崖に転がりながら着地した。
崩れ落ちた橋の方に視線を移すと、小僧がこちら側の崖に片手を掛け、今にも落下しそうな状況だった。
「狸吉様…ご慈悲を…!」
「ご冗談を。」俺は鼻で笑いながら助けを無視し、先に進んだ。
しばらく進むと、水道の蛇口が見えてきた。
水…これか…。懐にしまっていたグラスを取り出すと、蛇口を捻り、出て来た水を汲んだ。
水の色は……赤!
しかし水はみるみる蒸発していき、グラスに赤い色だけ付いた。
とりあえず、合格って事か。
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