闘技地獄

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俺はどんどん進むと、行き止まりにぶつかった。そこには小さいアパートがすっぽり入ってしまいそうなくらい大きなドアがあり、俺を圧倒した。 「狸吉様、ようこそおいでくださいました。」ドアの影からぬっと現れ、これまた10歳くらいの髪の長い少女が、俺を待ち構えていたようだ。 その少女の持ち物に目が止まり俺は唖然とした。自分の、いや、俺の身長よりも長い刀を携えていたのだ。 「ここは闘技地獄。凶暴な魔獣を退治するか、私と狸吉様、どちらかが命を落とすまで試練は続きます。さあ、参りましょう。」そう言うと少女は、自分の何十倍も大きいドアを両手で押し始めた。そして少女がぐっと力を込めると、ドアはゆっくりと音を立てて開いた。 呆気に取られるている俺には構わず、少女は開いたドアに入っていった。慌てて俺も追い掛けた。 中に入ると、急に明るくなり、そこは中世ヨーロッパ風のコロッセオとでも呼ぶべきか、古ぼけた闘技場があった。 「得物をどうぞ。」少女は俺に脇差し程度の小刀を差し出してきた。 「こんな短いやつか?」 「十分です。魔獣の名は一つ目のサイクロプス。弱点は大きな目です。そこをそれで一突きすれば倒れます。やや、早速来ましたよ。」 俺達の30m先に、これまた大きなドアが設置されていた。そしてそのドアが大きな爆発音と共に何者かに蹴破られた。その中から現れた魔獣は10mは超えているだろう、一つ目の巨人が勢い良く飛び出し、俺達に襲いかかってきた。 「うわぁぁぁ!!」俺は一目散に逃げ出した。しかし、巨人の一歩は俺の全速力で走れる距離を大きく超えていた。あっという間に回り込まれ、巨人が手にしている山をも砕きそうな大きな棍棒を振り上げた。 まずい…!やられる! 棍棒が振り下ろされた瞬間、俺は勢い良く少女に突き飛ばされ、事無きを得た。 「狸吉様、私が魔獣の一撃をギリギリで避けます。その隙に魔獣の手によじ登りその刀で目を突いてください。」 「無理に決まってるだろう!」 「十分です。さあ来ますよ。準備を。」 巨人は再び棍棒を振り上げた。 「許せよ。」その瞬間、俺は少女に後ろから飛びかかり巨人の方へ突き飛ばした。 そして振り下ろされた棍棒は、無惨にも少女を叩き潰した。 すると巨人は砂の様に崩れさり、あっという間に姿を消した。 「もう……十分だ。」 巨人が出て来たドアの先に設置されていた蛇口から、茶色の水をグラスに注ぐと闘技場を後にした。
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