第1章

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「不倫してるの?」 全く。 うんざりだ。 せっかく見付けた男が、人妻と不倫しているだなんて。 しかも、私の存在を彼女に話した? 泣いた?って。 当たり前じゃない。 何で話すのよ。 面倒な事に巻き込まれるのは嫌だ。 ――――― 初めて行った居酒屋のカウンター。 女友達と焼酎のロックを片手に、かなり出来上がっていた。 込みあうカウンター席にぽっかり空いた二つの席に、静かに現れた男女。 あ! 男の方は見覚えがある。 私の働くビルに入っているカフェの店員だ。 毎日顔を合わせてはいるが、客と店員の会話以外はしていない。 若い男だと思っていたが、連れの彼女が…。 かなり年上。 小柄な体にショートのボブ。 服装はいたって普通の、どんなジャンルにも属さないような格好。 一言で言えば、地味。 彼は割とおしゃれなのに。なんだか不釣り合いだ。 恋人同士ではないのか? よくわからない。 そこまで観察して止めた。 興味はない。
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