大樹の女神

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「ここは……」 辺りには見えるものはなく、一面真っ暗な空間が広がっている。 「これはいわゆる……転送失敗!?」 途方に暮れそうになったそのとき、眩い光と共に一人の女性が現れた。 (この人…知ってる気がする……?) 俺は会ったことの無いはずの女性にどこか懐かしさを感じた。 「私の願いを聞き入れて下さり、ありがとうございます」 女性は深々と礼をする お辞儀と共に重力に吊られて垂れる明るい緑の髪。 「…」 「私のこの世界は今大変なことになりつつあります」 「……」 「貴方にはこの世界を救う道しるべとなり、世界再生の旅の導き手となって頂きたいのです」 「………」 「勝手を言っているのは承知しておりますが、貴方でなければダメなのです」 「……(どっかでみたんだよなぁ………)」 「あの、何かいって下さい(汗」 女性は少し戸惑った様子で訴えかけてくる。 何故か見たときから懐かしさを覚えるその表情が、 記憶を思い出せそうで思い出せない。 「あぁ、すまない。 ところでここはどこだろうか? ゲートをくぐったらここにいたのだが…」 思い出せないので取りあえず無難な話題を持ち出した。 「はい、ここは私の世界の一旦…時の狭間と言う場所です。 貴方との会話の為、この場を用意させて頂きました。 私の名はマーテル…貴方をお呼びした者です」 マーテルと名乗った女性はにこりと笑い、俺に微笑みかけた。 「ご丁寧にどうも、俺の名前はユ……」 名乗る際に止める (これは仕事なのだ、そして第一人称としても大切な場面なのだ!カッコ良く決めなくては……!) そして深呼吸して ユウジ「俺はユウジ・A・ラドクリフ。 しかしマーテルとは…いや、何でもない。 それで、世界を救うとは?」 「実は私の弟であるミトスが悲しみと怒りに捕らわれ、大変な計画を企ててしまったのです」 ミトスとはあれだろう。 義理の姉である彼女の死を目の当たりにして、 "皆に優しい世界"と言うのを"差別の無い世界"と捉えてしまった悲しい奴。
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