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その昔、小さな国にある女がいた。
年は若く、笑うとえくぼができる、素敵な笑顔の持ち主だった。
髪は軽くパーマがかかっていて、金色に染めていた。
眉毛まで丁寧に染めていた。
髪留めに、大好きな青色のリボンを毎日つけていた。
彼女は、花を育てるのが大好きだった。
チューリップやバラなどの、ポピュラーなものから、異国から伝わってきた奇妙な植物まで、上手に育て上げた。
その花を売りながら暮らしていた。
彼女の育てた花はとても色合いが良く、「幸福を呼ぶ花」とさえ言われ、遠くの国から訪ねてくる者さえいた。
彼女は、休むことなく毎日働いた。
自分の大事な人を守るために。
彼女にとって、命より大事な大切な人とは、妹だった。
彼女には3つ下の妹がいた。小さなころから2人で支えあって生きてきた。
彼女にとって、世界中でたった一つの居場所だった。
毎日一緒に食事をし、働き、泣き、笑い、喧嘩をした。
小さなころに、暴漢に襲われたことから、人とは、ぎりぎり表面上の付き合いしかできなくなってしまった彼女にとって、
生きがいとは、孤独に妹を守ることだった。
それを「みじめ」とか「悲しい」「いやだ」とは、微塵も思ったことはなかった。
「孤独」と「境遇」は、彼女に大きな優しい力を与え、その魅力は体中からあふれていた。
そんな二人を、町の人は温かく、こっそりと支え見守っていた。それは、二人にも伝わっていた。
町全体が優しさにあふれ、とてもいい雰囲気だった。
街を歩けば、彼女が育て花がいたるところに飾られ、優しい匂いを放っていた。
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