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「ちょっと待ってよ!!」
女性は貴咲を呼び止めた。
「何?まだなにかあんの?」
「街まで連れてって!!」
「君だって立派な鎧に盾を持ってるじゃないか。僕みたいに武装してない人を同行させる?普通。」
「グリズリーを素手で倒してるじゃない!」
「倒したっちゃ倒したけど、その武装は見た目だけかい?」
「そ、それは・・・だって・・・。」
「だって・・・なんだい?」
貴咲は女性が言いづらそうにしている所にぐいぐい入り込む。
やっぱり貴咲はSだった。
「・・・んがないのよ・・・。」
女性は何かをぼそぼそっと言った。
「え?」
聞こえなかった貴咲は当然聞き返す。
「剣がないのよ!!!」
恥ずかしいのか女性は顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「剣がない?」
「休憩中にグリズリーに襲われて、びっくりして剣を置いて逃げちゃったのよ!」
貴咲はあっけに取られた。
「追いつかれて仕方なく盾で守って、ああなったけど!!」
女性は馬鹿だった。
武装しているってことはここは安全でない証拠。
なのに、対抗するための武器を手放したのだ。
無用心にも程がある。
貴咲は1つの言葉しか浮かばなかった。
それでは心を込めて言ってみよう。
「ダッサ!」
女性は目から大粒の涙を零した。
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