第1話 目覚めたらそこは異世界だった。

5/11
前へ
/12ページ
次へ
「ちょっと待ってよ!!」 女性は貴咲を呼び止めた。 「何?まだなにかあんの?」 「街まで連れてって!!」 「君だって立派な鎧に盾を持ってるじゃないか。僕みたいに武装してない人を同行させる?普通。」 「グリズリーを素手で倒してるじゃない!」 「倒したっちゃ倒したけど、その武装は見た目だけかい?」 「そ、それは・・・だって・・・。」 「だって・・・なんだい?」 貴咲は女性が言いづらそうにしている所にぐいぐい入り込む。 やっぱり貴咲はSだった。 「・・・んがないのよ・・・。」 女性は何かをぼそぼそっと言った。 「え?」 聞こえなかった貴咲は当然聞き返す。 「剣がないのよ!!!」 恥ずかしいのか女性は顔を真っ赤にしながら叫んだ。 「剣がない?」 「休憩中にグリズリーに襲われて、びっくりして剣を置いて逃げちゃったのよ!」 貴咲はあっけに取られた。 「追いつかれて仕方なく盾で守って、ああなったけど!!」 女性は馬鹿だった。 武装しているってことはここは安全でない証拠。 なのに、対抗するための武器を手放したのだ。 無用心にも程がある。 貴咲は1つの言葉しか浮かばなかった。 それでは心を込めて言ってみよう。 「ダッサ!」 女性は目から大粒の涙を零した。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加