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「とれたよ!」
現れたのは銀色の箱だった。特に特徴も無い化粧品箱のようなつくりをしており、シゲオは近寄って正面の取っ手部についている赤い丸ボタンを押した。
『ウィーン』という駆動音と共に、上蓋がゆっくりと開いた。その蓋の裏側には液晶画面がついている。同梱されていた説明書きにはこう書いてあった。
“対象となる人物は、備え付けの解析銃を自分のこめかみに接着させてトリガーを引いてください。初めての際には液晶上部のカメラにて撮影と音声収録も行ないます”
「トリガーを引けだってさ、まるでこうすると……“自殺”するみたいじゃないか?」
シゲオは箱の中から銃を取り出して自分のこめかみに当てた。
「こうして見ると、なんだか心配になるわね。新型は」
妻の声に対してニヤリと笑い、指示通りマイクに向かって名前を告げた後で、カチャリとトリガーを引いた。『ズキューン』という炸裂音と共に、液晶画面には自分の顔と“検査結果”が表示された。
◆スピリチュアルレベル=停滞
◆現在の心境=不安
◆有効な色=緑
◆オススメ映像=探検物
「ふぅん……今の僕の心理状態そのままかもしれないな……えっ
?」
シゲオが驚いたのも無理は無い。箱の中からプシャーと小さな機械音が聞こえ、甘い匂いが部屋に立ち込めた。
ついで画面には『ヘッドマウントディスプレイを装着して下さい』との文字が。
「こんな高価なものまで付いて、3万円はお買い得な気がするよ」
「あら、当たり前じゃないの。それは何年前の話なのかしら? ゴーグル型のテレビなんて5000円もせずに売っているわよ」
微笑むミサキを横目で捉えながら、恐る恐るディスプレイを装着した。改めて装着するのは何年振りだろう。
ミサキは気を利かせてリョウを連れて寝室へと向かった。
「技術力はやはり凄い物があるなぁ……」
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