魂掃流~コンソール~

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 魂掃流にハマリ、出社しなくなったのはこの1週間後の事。  1ヵ月後には、死亡事件へと発展した。死因は魂掃流のやり過ぎによる栄養失調。機械は夢を与える事が出来ても、腹を膨らませる事は出来ないようだ。  社会現象となった家庭用スピリチュアルケアマシーンに対しての法律が、直ぐに適用された。  1日3時間まで。それ以上使用出来ないようにする制限機能を製造メーカーは取り付けたのだ。  しかし、規制が厳しくなるに連れてもっと使いたいと思うのが人間の性であり、業である。  時間制限を取っ払った『“闇“魂掃流』なる違法マシンまで登場した。  一家に一台“ソウルウォッシング”は最盛期を迎えた。  外見だけ立派で中身はスッカスカの詐欺魂掃流も登場し始め、街角にあった精神科や心理療法の医院は全て潰れてしまった。それどころか、廃業になった医者まで魂掃流にハマる始末。  人々のスピリチュアルカウンセリングは遂に機械に取って代わられたのだ。  多くの人間は家から帰り、テレビをつけるよりはまず先に魂掃流を味わった。その映像は本当の自分を見ているかのようで、いつの間にかアダルト対応の物まで登場していた。  美女に囲まれたらバラの匂いが香り、ステーキを食べると肉の香りや焼けた匂いまでが伝わる。  ネオ・バーチャルリアリティ時代の到来に対して、有識者達の中には怠惰になる人間性について危惧する者もいた。  しかし、月々一定額の利用料金を課す事で、働かざるを得なくなり、人々はメリハリをつけた生活を行う事が出来た。  シゲルのような例は1万件に1件起きるか起きないか程度。大多数の人間は携帯電話の契約の為に働くように、魂掃流の為にも働いたのだ。
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