魂掃流~コンソール~

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 魂掃流が登場して早くも20年。  “夢魂掃流(ドリームコンソール)”と銘打った商品を発売。  キャッチフレーズはずばり──『夢の中でもウォッシング』  世界は、情勢は大きく変わった。魂掃流の開発・販売権利を持つ『SPFエンターテイメント社』は、全てを牛耳った。今や国連よりも発言権が大きいとされ、世界の王である。  しかし、魂掃流にハマる人々にとって世界情勢など取るに足りない出来事。少しだけ辛い現実から目を背ければ、そこにはこの世のエルドラド(黄金郷)が待っているのだから。 「別に何しようが、今更この便利な道具を手放すわけにはいかないよ」 「私には関係ないわよ。もう放っておいて」  人々の口からは無関心を装う言葉ばかりが突いて出た。  地球は、魂の掃除をする場所へと成り果てたのだ。魂掃流は仮初めの平和をもたらしたが、争いももたらした。  “利権”を巡って対立するのは世の常である。  核戦争の影響で多数の人が命を落とした。そして地球は不毛の大地となり、多くの人間が魂掃流を装着し、最後の洗浄を受けたまま亡くなった。  人間の歴史において文明の発達と共に、全てが変わることなんてザラにある事だろう。  死ねば魂が流転し、もう一度肉体へ戻ってくる──輪廻転生──の考え。  仏教やヒンドゥー教だけではない。多くの国の宗教に、この考えは取り入れられている。  生きながらにして魂を清らかにするのがベストなのか、亡くなってから清らかになると信じているのか?
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