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『禁忌』の答えを、魂掃流の中に見出したのは、“亡くなったはず”のシゲオ本人だ。
彼は瞼をゆっくりと開いた。
「……判断するのは人間だ。良いも悪いも、酸いも甘いも知ることだ」
シゲオはシャツで額の汗を拭い、溜め息をついた。時計を見ると昨晩就寝した時刻21時より12時間も進んだ午前9時。
「あっ、パパが起きたみたいよ」
「ぱぱ」
シゲオは駆け寄る息子の身体を抱き寄せ、そっと頬に口付けをした。
「寝すぎたよ……200年くらい」
「あら、もう遅いくらいよ?」
そう呟きながらミサキは、“自分の魂掃流(マイコンソール)”に手を伸ばした。使い慣れているミサキにとっては、1日1分で魂が綺麗に洗われるようだ。
じっとその様子を伺ったシゲオ。携帯が鳴り手に取った。
「もしもし」
『あ、課長。やりました? いくらなんでも発売から1年経ってて遅すぎますよ』
口うるさい後輩の声に一瞬不快感を感じたが、確かにシゲオは遅かった。
「わかってるよ……我が社の自社製品だもの、なかなか使う気になれないだろ?」
『もう新型もガンガン発売されるんですよ。CM観ましたか? それで……“洗礼”はどうでした?』
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