魂掃流~コンソール~

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「二度と味わいたくない。部長が青ざめてた理由が良くわかったよ。汗だくで今起きたんだ。悪い、後で」  後輩の『おもらししかけた』という声を遠くに聞き、シゲルはそっと通話を切った。  ディスプレイを装着しているミサキは、ゆっくりと器具を外した。 「……文明の利器もちゃんと使えば人々の生活と融合出来ると思うの」 「天才開発部長の君のセリフ、もう聞き飽きたし今初めて僕も体験出来たよ」    魂掃流を所持したばかりの人間に対して、強制的に映し出された映像。  それは、使いすぎるとどうなるか、便り過ぎるとどうなるのかという負の面を説明する物であった。生々しく、時に残酷に。  倫理観の問題を解決する為に、シゲルの妻であり『SPFエンターテイメント社』の元『技術開発部長』であった女性の提案があった。  それは、全利用者に対して一度は自分が『魂掃流』中毒になり死ぬ所を見せつけるように、との法令整備を整えること。  これによって、大多数の人間は『魂掃流』に対して適切な距離で向き合う事が出来たのだ。  まるでタバコを吸い続けると肺ガンになるプリントが、パッケージに施されたように。『魂掃流』の利用者自身が、使用に関してセービングをかけた。  適切な回数だけ利用することが、正しいスピリチュアルケアへと繋がった事は言うまでもない。   ──20XX年  ストレス・格差社会は世界規模へと広がった。  しかし、人々は争いを起こさずに見事に適応していった。  その影に一台の文明の利器があった事を、我々は忘れてはならない。
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