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「
『兄さん、ツイてますよ』
道を歩いていてたら、不意に女の子に呼び止められた。兄さん? ツイてる?
ここは土手にある砂利道でしかも一本道だ。後ろから声をかけられたのだが、はて、足音したっけ?
振り向くと、黒いワンピースを着て厚めの本と小さなステッキ(先端がドクロという良いセンス)を持った背の低い女の子がいた。どこからどう見ても不審な幼女です。
『あの……兄さんって?』
『知らない男の人を呼ぶときにはそう言えって言われました』
少女は無表情に言う。ますます訳が分からない。
『それ多分「お」が抜けてるな。それよりツイてるって何? 今ラッキーな運勢だから壺を買えとかそういうの? まさかね』
『いえ、そのツイてるでも、頭にゴミが付いてるでも、家に着いてるでも、眠りに就いてるでもありません』
『眠ってたら俺はどうしてこんなとこにいるんだ』
――夢遊病っていうんだよ。
『馬が入るツイてるです』
『難しい漢字知ってるね』
しゃがみこんで、視線の高さを合わせる。
『で、憑いてる、って?』
『はい、悪い霊が』
大真面目な顔で冷静に冗句を言いやがる。子供のくせに。
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