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「まずはそこに座って下さい。うおっほん。この本の作者は天才的にスピリチュアルな人で、文字列で霊世界への扉を作ってしまったんです。それがここ、そして私は物語のヒロインにして本のマスター」
「もう話についていけないけど、結局アタシは元の世界に帰れるの?」
「普通の人には無害な本ですが、本に影響されやすい人がたまに扉を通って紛れ込んでくるので、追い祓うのが私のもう一つの役割です」
ん? 追い祓う?
「ちなみにここは章扉の前の余白で、何故か金持ちが働く派出所です」
「どこかで見た設定ね。説明はいいから早く家に帰らせて。それとも、これってただの夢?」
「そうと言えばそうですね。ハジメの」
「ハジメ?」
「本の作者にして私の分身、いや私がその分身ですね。それと帰り方ですが、さっきあなたは柏崎怜也さんの一部始終を見ていましたよね、なら分かるはずです、思い出してみて下さい。帰還の鍵はこれで揃っているはずです」
思い当たる節がある。彼女の最後の質問は、日付と時間、空を見る指示。そしてそこに答えがあった……
「分かりました? ならもうお別れです」
「アタシ、成仏するの?」
女の子は首を振った。アタシは体から力が抜けていくのを感じた。
「この物語、面白いですか?」
「うん、続きが気になってしょうがなかったのに……ねえ、アタシは誰を恨めばいいの?」
「クサカという人を訪ねて下さい。私の主人です。恨むなんてことが出来るならば、ですけどね」
「ありがとう。ところであなたの
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