草食系男子のフリをする男

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ーーーカタカタカタカタ 私はデスクの上のPCのキーボードを、ひたすら打つ。 画面の向こう側には、目を遣らないよう、ひたすら打つ。 ーーーカタカタカタカタカタカタ ブルーライトを極限まで浴びて、臨界点に到達したのでは無いかと思う程、目が血走っているが、画面から目を離さない。 でも画面の向こうが、どうしても視界に入る。 一ノ瀬 葉月 彼が私の視界に入る。 ーーあれから私はお店の人、ヒロトさんが呼んだタクシーに乗って帰宅した。 一ノ瀬 葉月は 「芽依、家まで送ってあげれなくてゴメンね。」 柔らかい笑みで、タクシーに乗った私に微笑んだ。 「一ノ瀬くんは…乗らないの?」 「ん。俺は用事があるから、また明日ね。…運転手さん、お願いします。」 スマートな物腰で、運転手さんに発進するように促した。 タクシーが発進する。 タクシーの後部座席の窓には、手をヒラヒラさせて微笑む一ノ瀬くんの姿は小さくなって…見えなくなった。
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