だから僕はグラスで遊んだ

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「ゆうちゃん、お父さん好き?」 お父さんのほっぺを指先で撫でながら、 お母さんはそんな質問をした。 カリカリと霜が落ちたお父さんのほっぺは、 元からお病気のせいでガリガリだったのが、 死んでさらにシワシワになっていた。 「まあまあ」 くっ付けていたグラスがゴトリと落ちて転がる。 何故か好きとは言えず、 お母さんの動かしてない方の腕を握って僕はそういった。 「えへへ、そっかー。」 お母さんは困ったように笑って、やっぱりお父さんを触っていた。 「そうだ、ゆうちゃん。 お父さん死んじゃったし、これでお病気移らないから、 家族三人で川の字で寝ない? というか寝よう!!」 不意にお母さんがそんな提案をすると、 僕を抱き締めたままお父さんに飛び乗った。 「わあっ、お母さん!! ダメだよ、お父さん骨折しちゃうよ!!」 僕が着地したのは丁度お父さんのお腹で、 変な音もしなかったので大丈夫だろうけど、 心配だったのでそんなことをいった。 「わあ、ゆうちゃんはやっぱり優しいなあ。 だからお母さん、ゆうちゃんも好きだよ。」 お母さんはお父さんに腕を回して、僕を包み込む。 お父さんのお腹とお母さんのおっぱいに包まれる。 お父さんからは匂いがしなくて、辺りがお母さんの甘い匂いで一杯になる。 「ねえゆうちゃん、 どう? 気持ちよくない?」 耳元でお母さんが嬉しそうに囁く。 それが本当に気持ちよかったのが恥ずかしくて、 冷たいのが嫌だったけど僕はお父さんにしがみついた。 「ふふっ、わかったよ。 ちょっとお父さんのために部屋が冷たいかも知れないけど、 これからは毎日家族三人で寝ようね。」 お母さんがもっと嬉しそうになって、 強く僕達を抱き締める。 お母さんの暖かさと柔らかさが気持ちよくて、 お父さんの冷たさと皮から伝わるぶよぶよした中身の感触が不思議だった。
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