だから僕はグラスで遊んだ

6/10
前へ
/12ページ
次へ
「お父さん、南の貧しい国でお医者さんをしてたんだよ。 そのせいでお病気になっちゃって死んじゃったけど、 凄く格好良かったんだよ。」 「お父さんね、 腕無くなった時に泣いてるお母さんに 『迷惑はかけるかも知れないけど、これからは毎日新婚の時みたいにあーんして貰えるから僕は嬉しいよ』って言ってくれたのよ!!」 「ゆうちゃん、 お母さんゆうちゃんはお父さんみたいな人になって欲しいなあ。」 川の字で心地いい不思議な感覚に浸っていると、 横から嬉しそうなお母さんのそんな話がずっと聞こえていた。 でも何故か僕の心はもやもやしていて 本当に、不思議な感覚だった。 気持ちよくて、どれくらいそうしていただろうか。 「お母さん寒い。」 ついに僕は我慢の限界になった。 最初は少しだけお母さんが暖かかったが、ついにお母さんも冷たくなってきた。 「ええー、もう少し寝ようよ。」 ちょっと暖かくなって、お母さんが拗ねる。 「んじゃまた後で寝るから、少しお外で遊んできていい?」 もう少しお母さんといたかったが、 それより僕は とにかく寒かったので暖かい所に行きたかった。 「もう、これからは毎日こんな感じだからちゃんとお母さんと鍛えようね?」 「はーい。」 僕はお母さんの話をさらっと返して、外に走っていった。 「蒸しあじいいいい!?」 本当に気温の差があったらしく、 外は気持ち悪いくらい蒸し暑かった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加