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あまりの蒸し暑さに涼しいところを探して
無我夢中で僕は走った。
お母さんとお父さんのいた部屋は気温の差が酷すぎて頭が痛くなるので
別の場所を探したあげく、
僕は僕らがいた建物の、
芝生の庭の真ん中にいた。
「ぴゃー…」
そんな変なため息が出た。
一息オレンジジュースなんかを飲んでつきたい気分だった。
そんなこともあろうかと僕はグラスはきちんと持ってきていた。
「……オレンジジュースお母さんに預けたままだ。」
それに気が付いてなんかめんどくさくなった僕は、
その場に両手を伸ばして寝転んだ。
さっきまでの包まれた気持ち良さとは違い、
解放されたような爽快な気持ちよさが全身を通り抜けた。
「お父さん死んじゃったか…」
僕はお父さんが死んだのを悲しくは思わなかった。
『ゆう、お父さんはいつ死ぬかわからないからな。』
それがお父さんの口癖で、
お父さんがそんな人だったから、
僕はお父さんにしたいわがままも遊びも勉強も、
みんな全力で教えてもらった。
だから僕とお父さんはお父さんが死んでもなんの未練もなかった。
だからお父さんはお母さんが心配だった。
『ゆう、
残念なことにお母さんはお父さんのことしか見てないどうしようもないやつだ。
だからゆう、お父さんが死んだらお母さんに一杯甘えるんだぞ。
僕がいるよって精一杯お母さんにアピールするんだぞ。』
確かお父さんの最期にそんなことを言われた。
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