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お父さんはなんで最期にそんなことを言ったのだろうか。
僕にはわからなかった。
僕はお父さんもお母さんも大好きだ。
きっとお母さんと僕の話ばかりするからお父さんもぼくとお母さんが大好きだ。
ああして死んだお父さんとでも川の字になって寝ようっていってくれるからお母さんも僕とお父さんが大好きだ。
なのにお父さんの言葉が何でか気になった。
たぶんお母さんが心配だった、
その事しかわからなかった。
「おーい、ゆうくーん!!
お父さん火葬するよー!!最期の挨拶しなあ!!」
僕がそんなことを考えていたら、
遠くから知らない親戚のおばさんの声がした。
「……かそう?
なんだそれ。」
かそうがなんだかわからなかったけど、取り合えず僕は呼ばれているので、
元の建物に戻ることにした。
「あ、バッタだ。
なにバッタだろう?」
持っていこうとグラスを持ち上げると、
グラスの中にバッタが入っていた。
「そうだ、お母さん虫好きだからなあ。
お母さんに聞こう。」
確かお父さんはお医者さん、
お母さんは生物学者さんだった。
ある研究会で出会ってそれで結婚した。
お母さんが生きているお父さんに毎日のように言った言葉で話だった。
だから僕はグラスにバッタを入れたまま、
走って建物に帰った。
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