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赤い空の夕方だった。
「返してええ!!
武さんを返してよおお!!」
僕が走って帰ると、
黒い服がボロボロになったお母さんが泣いていて、怖いサングラスをした知らない親戚に捕まっていた。
「この異常者が!!
なんて奴を息子の嫁にしてしまったんだ私は…」
お母さんの叫んでいる相手はお父さん側のお爺ちゃんだった。
「それは武さんなのよ!?
なんで殺そうとするの!!」
「武は死んでるだろうが!!
これから火葬して天国に旅立たせる…
そんな武の死体と裸で寝ていて…
さらに死体を持ち帰りたいだと!?
なんて異常な女なんだ!!」
お爺ちゃんは涙を流しながらお母さんをそこら辺のゴミを見るのとおんなじような目で見ていた。
「なにいってるのよ!!
武さんならそこにいるじゃない!!」
「だからこれは死体…」
「だから死体がいるじゃない!!
なんで死体がいるのに武さんを殺そうとするの!?」
「だから死んでてもういないと…」
「いるじゃない!!」
「いない!!
いるとしたらわしらの心のな…」
「なんで!!
あんたら頭おかしいよ!!
なんで火葬なんかで無理矢理消して自分勝手な妄想にしようとするの!?
武さんはいるのに…
死んでるからって愛さないで燃やそうだなんて…なんて自分勝手なの?
この異常者!!」
僕が呆然と立ち尽くしてみた光景は、
目を血走らせて獣みたくなったお母さんと、
そんなお母さんをお爺ちゃんとおんなじ目で見る知らない親戚達だった。
「おい、剛!!
早く武を火葬しろ!!
こんな異常女に武を取られるな!!」
「わ…わかったよおやじ…」
「やめて!!
武さんを返して!!
武さんを殺さないでよ!!」
お母さんはずっと泣いていて、誰もお母さんを助けてくれなかった。
「お…お母さん!!」
僕はそんなお母さんを助けたくて、そう叫んだ。
叫んだのがダメだった。
「ゆう君!!
みちゃダメ!!
早く宴会室にゆう君を連れてって!!」
叫んだせいで見つかった僕は、知らないおばさんに嫌なのに抱き抱えられて連れていかれた。
「お母さあああん!!」
怖くて必死にお母さんを呼んだ。
その時、親戚の人はお父さんをごうごう燃える火の中に投げ込んだ。
「あ゛あああ!!」
僕が連れていかれて、
建物に入るそのドアか開いた瞬間、
親戚の人を振りほどいて“お父さんの方に走るお母さんが見えた”。
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