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土曜日。
朝早くからシズカがうちにやってきた。
「当然だけど………シズカ、その格好で行くんだよな?」
シャツに細身のパンツ。
完全に男バージョンのシズカ。
「当たり前でしょ。昼間のアタシはこれしか許されてないんだから」
製薬会社の跡取りとして生まれたシズカ。
大学卒業の時、いきなり「自分は女だ」と親にカミングアウトした。
跡を継ぐのは当たり前のようにシズカに決まっていたシズカの両親はかなり反対した。
でも、シズカの意思は固かった。
「アタシ、自分の店を持ちたいの!!」
そう言って、シズカは家出をした。
といっても、家出先は、佐久間家。
うちの母さんはそういう話しは三度の飯より大好きだし、快くシズカを受け入れた。
むしろ、嬉しそうだった………。
うちの母さんがシズカの両親と話しをして、条件付きでオカマとして生きることを認めてくれた。
あっさりとうまくいったのは、シズカのお姉さん、薫さんが社員の一人との熱愛が発覚したから。
その相手も、真面目で優秀な社員だったため、すんなりと結婚を認められ、その義兄が跡を継ぐことでシズカの件は解決した。
ただ、身体はいじらない。
自宅で女装しない。
一人暮らしは不可。
自分の家の体裁を守るだけの条件。
その条件だけは必ず守ることを言い渡された。
心の自由を得たシズカは、店を持った。
それまで株でこっそり儲けていた資金で作った1号店は【Moon blossom】
これは、シズカの趣味の店みたいなものだったから、採算は度外視。
もう一つの高級クラブが大当たりし、ホストクラブに、バーと、夜の成功者となった。
美女でイケメンオーナーというでっかい看板も功を奏したらしい。
あの頃だな………。
うちの母さんとシズカが親子のように仲良くなったのは。
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