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「本当に、今更よね。
でもね、蒼介さん、千咲と別れてからは女性とは一切お付き合いせずに、ひたすら仕事頑張ったんですって。
この前できた恵比寿のレストランも、蒼介さんが手掛けたって言ってた」
「まぁ!もしかして今人気の創作和食のお店!?
私この前行ったわ! とっても素敵なお店だったわよ」
「母さん、話の腰を折らないでください!」
俺がそう言うと母さんはしゅんとして頷いた。
「今日蒼介さんがうちに来た時連絡先も教えてもらったんだけど……。
その時聞いた住所が………品川で」
「千咲さん、もしかして………蒼介さんに会いに行ったのかしら?」
………そういうことか………。
思い出してみれば、三門と千咲が同時に席を空けた時間があった。
きっとあの時………。
二人は再会して昔の気持ちが蘇ったんだ。
「ただ千咲からは何も聞いてないから、なんとも言えないけど………」
3人同時に溜息が零れた。
分かったことはただ一つ。
───千咲は俺を選ばなかった。
『また…………蒼介を………好きになったりしないかな………』
千咲のあの台詞を思い出した。
………その通りになった訳だ。
「………帰ります」
俺は席を立った。
「智志、今日はこっちに泊って行きなさい?」
「いえ、戻ります」
母さんが何か言いかけたけど、俺はすぐに家を出た。
タクシーを呼ぶのも億劫で………。
どこをどう歩いたか覚えていないけど、
どのくらい時間がかかったか分からないけど、
マンションに帰り着いた。
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