結婚式。そして………

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すぐに寝室に向かってベッドにダイブした。 千咲………。 千咲………。 「………千咲」 俺、また振られたんだ………。 痛い。 あちこち痛い。 目頭が、 鼻の奥が、 喉の奥が、 肺も、 心臓も、 胃も、 体中が痛い。 でも一番痛いのは、心だった。 手のひらで顔を覆うと、左手薬指のリングが顔に当たった。 そのまま手のひらをかざしてリングを見つめる。 このくらいで浮かれて。 千咲を手に入れた気分になって。 あんな短い時間の再会で三門に持ってかれるくらい、 千咲にとって俺はたいしたことのない存在だったんだ。 リングを抜き取って……… 投げ捨てた。 寝室のクローゼットに当たったのか、小さい音を響かせてどこかに消えて行った。 千咲………。 こんなに好きなのに………。 俺、千咲じゃないとダメなのに。 こんな日がくるなんて………。 「………痛い………」 千咲じゃないと癒せないよ。 俺のところに戻って来てよ。 「………千咲………」 小さく呟いた声は、暗い部屋の中に溶けて消える。 俺のそばにいてよ………。 千咲、戻って来て………。 千咲、お願いだから………俺のとこに戻って来て。 【第二部 完】
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