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「ところでミシェル。今夜、君を食事に招待したいのだけれど? 出来ればすぐ来て欲しい。見せたいものもあるんだ」
デイビットの顔には、少しだけギラついた意識が隠れているようだった。
なるほど。暇なのだろう。
多分、彼は……私と体液交換をしたいのだと思う。
お互いにリスクの検査はパスしているし、私も彼とするのは嫌いじゃない。
私は了承の意を伝えると、通信を切り、重力ブロックを抜け出した。
古代では愛を交わす行為が、今ではただの娯楽、か。
確かに、時々生まれる肉体の滾りはどうしようもない。
生殖機能は制限されているはずだが、下腹部の血が踊り狂うようなこの感覚は、なぜ存在し続けるのだろうか。
旧人類のように生を急ぐと言う事も無い。
死はとっくに克服されてしまい、老いも無い。
同時に子孫を残す理由も消え去った。
他人に対する興味の無さからか、価値観の違いからくる争いでさえ無い。
私も培養液で満たされた培養器から生まれてから、ずっと暇を潰すだけの人生だった。
それを考えれば、少しくらいは刺激があっても良いとは思うけれども。
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