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彼の暇つぶしはコンピュータープログラムである。
データーを解析し読み漁るだけの私とは違い、過去の地球を再現するシミュレーションをしている。
「グラスにカクテルを作るように」とディビットは言った。
様々な情報を用意し、注ぎ入れてかき混ぜる。
そうして混ざり合った情報は彼が組んだプログラムによって処理され、データとしての擬似世界が形成された。
自動擬似世界生成システム。
気候や土地の形成、それから生物の誕生。
進化。
時々3Dグラフィック化されたその世界の光景を見せてもらったが、とても興味深いものだった。
長い年月を早送りで高速化し、今では人と呼ばれる種族が世界中に分布するまでになった。
文明が生まれ、様々な技術が生まれている。
火、石器、狩猟、車輪、農耕。
そして鍛冶。
ただ、技術が進歩すると文明同士が頻繁に衝突し、戦争が起きた。
デイビットはそれを観測するたびに、複雑な表情を見せた。
「別にデータの中だけど、人が死ぬのを見るのはあまり良い気分じゃないな」
それは全くの同感である。
死は、私達の身近にあってはならない。
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