遥か遠い未来 遥か彼方の宇宙から

9/11
前へ
/14ページ
次へ
『デイビット。奴らに見つかったぞ。時間が無い』 「ミシェル。聞いてくれ。俺達は、俺たちの時間を生きた。例えそれが惰性に満ちていて、怠惰に流れていたとしても。でも、俺達は出会って、愛し合えた。他の、この世界の人と言う種族が忘れてしまった感情を取り戻せたんだ。老いない、死なない身体を持っていても、それでも人間に戻れたんだ」 「デイビット、あなた、体が……」 「君を、失わせるわけには行かない。外の世界に送り出す。俺の機械と、外の機械を同調させて、動かしてやる。君はもう、データなんかじゃなくなるんだ。もう、誰からも手出しさせない」  デイビットは、その言葉をきっかけに消え始めた。 「デイビット、だめ、待って」 「俺はいけない。俺は、先に見つかったからか、もう、時間が残されていないみたいだ」  彼は、私の言葉に頷くようにして私の手を強く握り締めると、言った。 「君を愛してる。どうか、生きてくれ」  そして、デイビットの手の質感が消える。握り締めていた力も。  体温も。  同時に私の肉体も。  ……部屋にある機械が作動している。  思った。  デイビット。酷く一方的じゃないか。  一方的に話して、こちらの理解が追いつかないまま勝手に巻き込んで。  ああ、この喪失感は何なのだろう。  長い暗闇が私の頭に広がり始めた。  だが、遠くに、小さな、本当に小さな光が見える。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加