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意識というものが、僕に目覚めたとき、そこは暗闇に包まれていた。僕は小さく丸まりながら光の玉に入って、トクン、トクンと小さな鼓動を繰り返す。
ねーんねーん、ころーりーよ。ねんねーしなー。
不意に暗闇にそんな声が響き、まるで優しく撫でられているような心地よさが伝わってくる。僕は嬉しくて、その声をもっとよく聞こうとした。誰だろう? 誰が歌ってくれているのだろう。
無意識のうちに誰かが歌い、撫でていることがわかって、そのうちにそれが僕は母だということがわかった。母、その言葉に強く惹きつけられ、そして、僕はもっともっととせがむように動いた。
母もそれに呼応するように、子守歌を歌ってくれた。幸せだった。母はどんな人なのだろう? 優しい人だといいなと思っていた矢先、僕の何かが枯渇してい行き始めた。
乾く。壊れる。流れ。失う。僕の中からいろんな物が流れ落ち、消えていく。
その頃から母の子守歌がなくなり、泣く声だけが聞こえ始めた。変わりにすすり泣く声だけが聞こえてくる。
やめて!! 泣かないで!! もう一度、子守歌を歌ってよ。もう一度………、僕は大丈夫だから…………。
けれど、母のすすり泣く声は無くなることはなく、ある日、ポンッと暗闇から放り出された。
はじめて見る外の世界に、その眩しさに僕は驚きながら辺りを見渡し、そこに母は居た。大きく膨らんだお腹を抱えて、大粒の涙を流しながらそこに居た。
「あぁ、あぁ、なんてこと、この子に賽の河原の石を積ませることになるなんて、この子はまだ、喋ることも立つこともできないというのに……」
ーーーー僕はここに居ると声を出したけれど、母には聞こえていない、両手を合わせて擦り切れるほどに祈っている。
母さん、母さんと呼んだけれど、答えてはくれなかった。
それからいくらたたっだろう。母の夫だという男が、彼女に向かって言う。
「いつまでも、その子のことばかり考えるのはやめないか」
激しい責め立てるような口調で、彼は言う。
「死んだ子のことばかり考えてるんじゃない!!」
その言葉に母は涙でいっぱいなった顔をきっと強めた。死んだ? 死んだって? 僕は訳も分からず立ち尽くす。ここにいるのに?
「そんなわけありません。あの子はここにいるんです。 貴方には見えていないでしょうけれど!!」
まっすぐ僕の居るほうに指差して叫ぶ。
「ほら、そこに!!」
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