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「まあ、どうしたの?」
台所で夕食の準備をしていた母が、高校から帰ってきた幸子の腕に抱かれている猫を見て驚いた。
「うん。ごみ棄て場にすてられてたんだ。かわいそうだったから拾ってきちゃった」
と、猫の頭をなでながら。
「でも壊れてるんじゃないの?」
「うん。たぶん。明日は学校、クラブもないし、治しにいってくるよ」
「そうね。ちゃんと治るといいね」
母は優しく言った。猫を飼うことには反対しなかった。なにしろ、幸子が拾ってきたのは、ロボットの猫なのだ。
ペットロボットが人々の生活に入り込んで久しい。最初はせいぜいオモチャ程度の性能しかなく、新し物好きな人による一時のブームは去ってしまったが、高度なコンピュータが内蔵され、自然な仕草ができるようになったペットロボットが商品化されていくと、徐々に人々の生活に入っていくようになっていった。
本物と違って餌は食べないから排泄もしない。世話するのは楽である。さまざなな事情でペットの飼えない人にはうってつけだった。生きているペット同様家族の一員として浸透するようになっていった。
今では犬、猫、小鳥、ハムスターなどのオーソドックスなものから、イタチ、ペンギン、ワニなど、通常なら飼育するのが難しいものまで。さらにオリジナルデザインの動物と、いろんな種類のペットロボットがつくられている。
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