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〈治療〉に五日かかった。
他の家電ならば、修理に時間がかかっても、その間は不便だというだけだったが、ペットロボットの場合は心の拠り所にしている人もいるので、メーカーもより素早い対応を求められていた。だが、最近は治療に訪れるペットが多く、〈治療〉は若干遅れ気味だった。普及のスピードに、サポートが追いつかないのだ。
〈退院〉した富士丸はすっかり元通りで、以前よりも元気にはしゃぎまわった。
当然のように外へも出ていった。
なるべく外へ出さないように注意しているのだが、
「でもベランダで洗濯物を干そうとしたら、その隙に出ていっちゃうのよ。あの子、けっこう頭いいわよ」
と母は弁解する。
サッシのガラスを叩く音がした。帰ってきたらしい。
開けてやると、富士丸は「にゃあ」と意味ありげにないた。
無事に帰ってきて、幸子はほっとするのだった。
「外を遊び歩くところまで、本物に似てなくてもいいのに」
テレビを見ると、ちょうどニュース番組の時間だった。
すてられていくペットロボットについてのミニ特集を放送していた。そして、最近の虐待されるペットロボットについても。心ない人間がストレス発散のためにやっている、とか、飼い主に虐待されている例も多い、とか、物知り顔の解説者が言っていた。本物の動物ではないものの、大事なペットロボットを壊された飼い主としては憤懣やるかたない。現代人の歪んだメンタルを危ぶむと結んでCMになった。
ペットロボットに愛情を持って接する人もいれば、その逆の人もいる。生きているペットと同じだ。
他人事ではない幸子は、猫じゃらしで遊びながら、
「私は、ぜったい、おまえを壊したりしないからね」
前足でじゃれる富士丸を、幸子は愛おしく見つめた。
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