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結局、モララーは彼と5時間ほど語り尽くした。
結局「彼女」についてそれ以上話すことはなく、あの女優が可愛いとか最近の政治家は不祥事だらけだとか、ワイドショーで散々取り扱われたような話題ばかりに花を咲かせていた。
( ・∀・)「ふー……」
酔ってはいるが、泥酔してはいない。そんな状態でモララーは帰路についていた。
火照った頬を、冷たい夜風が撫でる。
ふと思い出したのは、先日見た女性の姿。
やはり、見間違いだったのだろう。「彼女」を思うあまり、疲れ気味の脳が少しばかり誤作動を起こしたのだ。
モララーはそう結論を出した。
そうと分かれば気分も晴れやかなものになり、自然に口角も上がる。
それと同時に、携帯から軽快なメロディーが流れ出した。明るい調子が特徴的なクラシックだ。
モララーは携帯を取り出そうと手をポケットにやる。しかし、酔いのせいかそのまま道路へと携帯は落下する。
( ・∀・)「っとと……」
後方に落ちた携帯を拾おうと、覚束ない足取りでターンする。
その際、視界の端にそれは写り込んだ。
電灯に照らされた下、栗色のロングヘアーの女性が歩いていた。
(;・∀・)「っ、な、待っ……!」
モララーが声をかけようとすると、彼女は髪をなびかせて駆けていき、そのまま角を曲がって姿を消した。
モララーも慌てて後を追おうとするが、ぐらりと視界が揺れてすぐに転けてしまった。
酔いの回った体では上手く立ち上がれず、結局モララーは座り込んだまま息を切らしていた。
脳に酸素を送ろうと、短い呼吸を必死に繰り返す。冷たい汗がこめかみをつたう。
嫌というほど、心臓の音が大きく聞こえる。
(;・∀・)「……僕は、狂ってしまったのか?」
脳裏にこびりつく「彼女」の姿は、笑っているような気がした。
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