どうやら短編集のようです

(,,ﾟДﾟ)待ち人のようです

(,,ﾟДﾟ)｢いや失敬。確かに下世話な詮索であったな」

('、`*川「……」

(,,ﾟДﾟ)「しかし、この雨があがるまでは家に帰れやしない。無礼は百も承知だがね、アンタの待ち人の話をどうか聞かせちゃくれませんかね｣

女は怒りもせず、また笑う事もしなかった。睫毛の影を落としたまんま、雨粒が打つ地面をじいと見ている。やがて女は赤い唇をそっと動かした。

('、`*川｢……待っているのは、わたくしの愛しい人です。あのひとは凛々しく、それは素敵なお方なのです。けれど彼には親が決めた許嫁がおりました」

(,,ﾟДﾟ)「それは、なんとまた……」

('、`*川「ええ、よくある話です｣

女は雨の降る景色を見つめながら語ってゆく。
長い髪が一本頰にかかる女の横顔を、男はじっと見つめている。

('、`*川｢わたくし達は共に逃げようと誓いあいました。家族も故郷も捨て、ふたりで幸せになろうと。……しかし、それは叶いませんでした｣

(,,ﾟДﾟ)｢それは、何故｣

('、`*川｢死んでしまったのです｣

びり。女の声が鼓膜に響く。決して大きな声では無かったが、その場の空気や雨音を掻き分けて突き刺してくるようだった。思わず男は息を飲む。

('、`*川｢見えぬ未来に恐怖を覚え、自ら川に身を投げ、あろうことか契った約束を捨ててしまったのです。……そして、ここがわたくし達の待ち合わせの場所でございました｣

男は何も言えず、女の長い睫毛を見つめる。女の睫毛は、僅かに濡れているようだった。

('、`*川｢話は終わりです。もう、雨はあがりました。わたくしの待ち人が来ることはありません。……わたくしは、もう行くことにします｣

(,,ﾟДﾟ)｢……どうか｣

男は声を喉から絞り出す。

(,,ﾟДﾟ)｢どうか、お気をつけて｣

女は微笑むと、川沿いの道を歩きだす。男は会釈すると女に背を向けて、反対方向へと歩き出す。
からころと下駄を鳴らし、せせらぎが少しばかり強くなった川の傍を歩いてゆこうと。

ふと、どこかで夜を裂くような犬の遠吠えが聞こえた。

男は気付いた。

女は下駄を履いていたのに、足音がひとつも聞こえない。

慌てて振り返るも道には誰の姿もなく、男の影がただ伸びるだけ。

(,,ﾟДﾟ)｢……川に身を投げたのは、貴方だったのか｣

男の声は誰にも届かず、薄闇へと溶けていった。