( ・∀・)彼女は存在しないようです

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インタビューが終わり関係者が帰っていくと、モララーは小さく溜め息をついた。 取材は何度か経験したが、やはりまだ慣れない。元より口下手で内気な性格なのだ。これから先も慣れることはないのかもしれない。 モララーは溜息を吐くと、置かれている自分の作品たちに目を向ける。 椅子に座ってうたた寝をしている女性。嬉しそうに頬を染めて振り向く女性。そっと髪をかきあげる女性。 全て、栗色のロングヘアーをした「彼女」だ。 これらは全て自分で描いたものだったが、それでもモララーはこれらの絵を見ていると幸福な気分になるのを感じた。 固く結ばれていた紐がするりとほどけるような、心地よい感覚。 実在しない女性が、これほどまでに自分を癒してくれるとは。 モララーは微笑むと、銀色の額縁をそっと指でなぞった。
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