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「あっ」
目の前に立っていた女性が振り返る。
とても美しい人。
でも酷く顔色が悪い。
その女性の視線を追い、
ホームのコンクリートの上に目を向けた。
「あ……」
私は咄嗟にしゃがみこみ
派手に散らばったブレスレットの小さな石を、急いで拾い集めた。
「 」
頭上で女性の声が聞こえる。
コロン
転がった最後の小さな石を、つまみ上げながら
「……え?」
顔を上げた私の耳に、電車を待っていた人々の叫び声が聞こえた。
パパァアァァアァァアン!!
電車の警笛が耳を突き抜ける。
キキキィィィィィ!!
急ブレーキ音を派手に鳴らしながら、ホームに入ってきた電車。
慌てて立ち上がった私の目に、
目の前にいた筈の女性が、電車に撥ね飛ばされた後で、大きな鉄の車体に飲み込まれるのが映った。
それはまるで、スローモーションのように。
拾い集めた小さな石をギュッと握り締めたまま、私はその場に立ちつくした。
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