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それからの騒ぎは酷かった。
ちょうど帰宅ラッシュの時刻とぶつかったホームは、サラリーマンやOLや学生で、ごった返していた。
泣き叫ぶ女子高生たち。
ワァワァ騒ぎ立てる大学生らしき若者。
女性がホームに落ちた辺りには人だかりが出来て、中にはスマホで動画や写真を撮ってる人もいた。
私は後退りした。
ドン!
誰かにぶつかった。
「いてぇな!気をつけろ!」
どうやら思い切り足を踏んでしまったようだ。
「す、すみません」
私は頭を下げ謝ると、急いでその場から駆け出した。
ホームを走り、さっき下りてきた階段を駆け上がり、もう一度止まった電車を振り返る。
あの女性が助け出された様子は見られなかった。
恐怖が足の震えとなり、
じわじわ全身に広がってゆく。
手摺につかまりながら私は必死に上った。
とにかく怖かった。
突然、目の前で人が消えた。
死んでしまった。
その場所から
一刻も早く逃げ出したかった。
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