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『まだ会社終わらない?』
電話に出た私の耳に、浩太郎の明るい声が聞こえてくる。
「ごめん……なさい……」
『ん? 何かあった?』
私の様子に彼が気付く。
浩太郎は男のわりに勘が鋭い。
「会社の最寄り駅で……じ、人身事故が……あって……」
『え?マジか?ちょっと待って』
浩太郎が何か、カチャカチャ電話口でやってる。
『ほんとだ。山手線止まってるな』
「……うん………」
『わかった。じゃあ、駅の近くのファミレスに入ってて』
「え……?」
『電車はしばらく動かないだろうから、これから車で迎えに行くよ』
私と違って、いつも彼は行動力がある。
「ありがとう……」
ファミレスで落ち合う約束をしてから、私は電話を切った。
今夜は金曜日。
別の会社に勤めている私たちは、久しぶりにデートする予定だった。
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