ブレスレット

6/11
前へ
/12ページ
次へ
 一時間後。  『お待たせ!ごめんな!道が混んでて遅くなって』  店に駆け込んできた浩太郎の顔を見て、私は思わず涙ぐんだ。  『麻百合(まゆり) 平気?』  驚いた浩太郎は真向かいの席につくなり、私の手をギュッと握り締めた。  彼の大きくて温かな手。  とても安心する。  浩太郎を待ってる間、私は何も口に出来ず、ずっと考えてた。  さっきのあの光景。  そして切れたブレスレット。  拾い集めて渡せなかった、パワーストーン。  あの女性が、飛び込み自殺したのは明らかだ。  『なんか大変だったな』  浩太郎が気を遣うように優しい声で言った。  「……うん。目の前で……だったの」  『それはキツいな。まだ身元も、わからないみたいだし』  「浩太郎」  『ん?』  「私ね。その女性と話した」  『え?話したって…電車に轢かれる前にってこと?麻百合、知り合いだったのか?』  「ううん。でも……」  『でも……なに?』  私の手を更に強く握り締めながら、浩太郎が身を乗り出し顔を寄せた。  「その女性の……形見になる物を拾っちゃって……」  『形見?なにそれ。見せて』  浩太郎に言われて私はバッグから、あのティッシュの包みを取り出した。  「これ……」  ティッシュを広げて見せると  『……ッ』  浩太郎が目を見開いた。  『これって……』  「パワーストーンのブレスレットでね。それが切れて拾うのを手伝ったの」  『そっか……』  そう答えた浩太郎を見ると、顔面蒼白だった。  「浩太郎?」  私は心配になり彼の瞳を覗きこんだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加