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一時間後。
『お待たせ!ごめんな!道が混んでて遅くなって』
店に駆け込んできた浩太郎の顔を見て、私は思わず涙ぐんだ。
『麻百合(まゆり) 平気?』
驚いた浩太郎は真向かいの席につくなり、私の手をギュッと握り締めた。
彼の大きくて温かな手。
とても安心する。
浩太郎を待ってる間、私は何も口に出来ず、ずっと考えてた。
さっきのあの光景。
そして切れたブレスレット。
拾い集めて渡せなかった、パワーストーン。
あの女性が、飛び込み自殺したのは明らかだ。
『なんか大変だったな』
浩太郎が気を遣うように優しい声で言った。
「……うん。目の前で……だったの」
『それはキツいな。まだ身元も、わからないみたいだし』
「浩太郎」
『ん?』
「私ね。その女性と話した」
『え?話したって…電車に轢かれる前にってこと?麻百合、知り合いだったのか?』
「ううん。でも……」
『でも……なに?』
私の手を更に強く握り締めながら、浩太郎が身を乗り出し顔を寄せた。
「その女性の……形見になる物を拾っちゃって……」
『形見?なにそれ。見せて』
浩太郎に言われて私はバッグから、あのティッシュの包みを取り出した。
「これ……」
ティッシュを広げて見せると
『……ッ』
浩太郎が目を見開いた。
『これって……』
「パワーストーンのブレスレットでね。それが切れて拾うのを手伝ったの」
『そっか……』
そう答えた浩太郎を見ると、顔面蒼白だった。
「浩太郎?」
私は心配になり彼の瞳を覗きこんだ。
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