120人が本棚に入れています
本棚に追加
『あ、いや、ごめん』
「どうかした…?」
『いや、何でもないよ。形見とか言うから、少し驚いちゃってさ』
いつもの浩太郎の口調に戻った
「だって。拾い集めて顔を上げたら、その女性が……」
『悪い。もうその話は、やめないか?』
唐突に浩太郎が私の話を遮る。
「え…?」
『これから飯食うしさ。麻百合も早く忘れなよ』
「………」
『防ぎようのない事故だったんだ。な?』
「……うん。わかった……」
浩太郎が話を切り上げたい素振りを見せて
私は戸惑いながらもパワーストーンを丁寧にティッシュで包み、またバッグにしまった。
『それ。捨てたら?』
「え?」
浩太郎がバッグに視線を送る。
『さっきの石。なんか気味悪いじゃん』
「う……ん」
浩太郎の様子が、おかしい。
『さっさと捨てた方がいいよ。人が身に付けてたアクセサリーなんてさ。しかも、目の前で……』
さすがにその先は言いづらかったのか、浩太郎が黙りこんだ。
「わかった。とりあえずここに捨てていくのも気が引けるから、家に帰ったら捨てるね」
そう言った私の言葉に、まだ納得出来ない顔を浮かべていたが、
『そうだな』
それ以上、意見する事もなく調子を合わせるように、彼が答えた。
その晩。
私たちは、その駅から30分くらい車で走った所にある、ラブホテルに泊まった。
最初のコメントを投稿しよう!