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人が燃えている。
悲鳴が聞こえる。
その男は苛立ち、舌打ちした。
「引き上げるぞ。」
家臣の大道麟之介(ダイドウリンノスケ)が、背後で短く「はっ」と頭を垂れた。
「麟。」
「は。」
男は踵を返し、燃え盛る掘っ建て小屋を背後にして歩き出す。
「人の焼ける匂いとは、鼻に付くのう。」
「……は。」
堪えきれず、炎に包まれた小屋から人が飛び出した。しかし、性別も判らない。それは最早、炎を纏う黒い塊でしかなかった。やがて力尽き、野に倒れる。炎は灰になるまでその身体を焼き続けた。
小屋の周囲は木の柵で囲われ、臣下の兵が人払いをしているが、哀れみと好奇心から群がる人々は押し合い圧し合いする。
「だが、見せしめには丁度良い。」
「……は。」
男は不敵に右の口端を上げた。麟之介はただ俯いてその後に続いた。
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