非常階段を駆け上がって

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「ああ~、暑い暑い。……おぉ、隣、すまんねぇ」  突然、のり子の隣に男性が座った。  半袖の白いワイシャツに、黒いスラックスを穿いている。   年は、のり子の父親と同じくらいだろうか。  手に持っている帽子で、胸元をパタパタあおいでいる。 「お嬢ちゃんも、広場で遊ばないのかい?」  のり子は俯き、両手をぎゅっと握りしめた。 「こんなところで座ってるだけじゃあ、つまらんだろう」  のり子はカッとなって立ち上がった。  そのまま逃げ出そうとしたところ、男性が言った。 「今日、そこの陸奥屋でお祭りをやってるんだ。お嬢ちゃんも遊びにおいで」
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