非常階段を駆け上がって

11/21
前へ
/23ページ
次へ
 のり子は立ち止まったけれど、振り向かなかった。 「きっと、友達も来ているよ」  のり子は駆け出した。  夏祭り。  ……昨年、ケイコとナオコといっしょに行った。  ナオコのお母さんに浴衣の着付けをしてもらって、髪も結ってもらって。 「……行けないよ」  のり子は陸奥屋の入口から少し離れたところに立ち、屋上を見上げた。 「藤森さん?」  ハッとして、のり子は振り向いた。  そこには、同級生の男の子が立っていた。  学校で顔は見たことがある。  名前、なんだっけ。  のり子が何も言えないでいると、男の子はにっこり笑った。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加