非常階段を駆け上がって

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「もうっ、近寄らないでよ」 「気持ち悪~い」 「キャハハハハハハハッ」  何度も繰り返された言葉が、笑い声が、耳に焼き付いて消えない。  階段のきしむ音がした。  母だ。  のり子はふとんを被った。  薄手のふとんとはいえ、頭まで潜ってしまえば額に汗がにじむ。  息苦しい。  部屋の引き戸が開く。 「のり子、もう10時よ。いつまで寝てるの?」  のり子は小さな身体をさらに縮めた。  芋虫の気分だ。
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