非常階段を駆け上がって

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 ひとりきり。  午後の予定なんかない。  今日も、明日も、あさっても。  もしかしたら、ずっと。  湯気を顔に浴びながら、のり子は涙をこらえた。  小学3年生のときに仲良くなった、ケイコとナオコ。  クラスが離れても仲良しなのは変わらず、放課後は互いの家を行き来していた。  それが2年と少し続いた。  ふたりの様子が急変したのは、1か月ほど前のことだ。  のり子は、ケイコと同じクラスだ。  ふたりは5年3組で、ナオコだけが1組。  ある日、消しゴムを忘れたのり子は、ケイコに予備を貸してほしいと頼んだ。  そのとき、ケイコは目を逸らした。
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