非常階段を駆け上がって

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 ……私なんか、いなくなればいいんだ。  そうしたらみんな、嬉しいんでしょう?  喜ぶんでしょう?  ポタポタ、ノートに涙が落ちる。  漢字ドリルやワークなど、ほかにもやることは残っていたけれど、のり子はもう宿題をする気分になれなかった。  窓を開けていても、扇風機をまわしていても、額から汗は流れ落ちていく。  ……暑い。  のり子はふと思い立って、小さなポシェットに小銭の入った財布を入れ、外に出た。  母の言いつけどおり、戸締りだけはしっかり行った。  自宅の鍵もポシェットに入れて、歩き出す。
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