ガリレオの幽霊に取憑かれて

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   ◆◇◆  宇宙へ初めて望遠鏡を向けたのがガリレオだ。  世界にはまだ、彼のその好奇心が息づいているせいか、晴れの空が埃っぽい日に外に出てオペラグラスをのぞきこむと、近い未来が見える。  なぜ、どうしてオペラグラスなのか。  それは、オペラグラスの構造はガリレオ式だから。彼の名前が残されているのは、オペラグラスくらいだから。  見えるのが近い未来なのは、オペラグラスの倍率は望遠鏡に比べて低いから?  僕は、オペラグラスをのぞきこんだまま町を歩く。  ガリレオの幽霊が世界に取憑いた今日は、みんなこぞって未来を見ようと、オペラグラスをのぞきこむため外に出ている。だから、今日の町は満員御礼だ。 「おおっと」 「あ。ごめんなさい」  オペラグラスの狭い視界に騙されて、一人の老人とぶつかってしまった。  慌てて僕が謝ると、老人は気さくに笑った。 「いいさ、いいさ。夢中にオペラグラスを覗き込んでいたんだろう? 誰だって今日は無我夢中さ。なにせ、ガリレオの幽霊が取憑いているんだからね」 「…………?」  けれど僕は、不注意な僕を優しく許してくれた老人の手に握られたものを見て、不思議に首を傾げた。  近い未来を見るため外に出た老人は、ガリレオ式のオペラグラスを持っていなく、皺だらけでごつごつとした両手にあったのは透明なガラスコップと虫眼鏡だった。
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