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けれど、
「見ぃーつけたっ」
「わぁ」
走るのに疲れて、それでもオペラグラスの接眼レンズから目が離せず息を整えていた僕の視界に、突然と誰かが飛びこんできた。
オペラグラスの視界は本当に狭い。その狭い視界一杯に幼い顔が広がれば、せっかく整えた息がまた乱れてしまうくらい驚いてしまう。
でもやっぱりオペラグラスは僕の両目から離れなくて。僕は、オペラグラスを持ったまま顔を上げた。
そこに現れたのは彼女だった。
「メイ……」
「んふふ~。遅いよ、ずっと待っていたんだから。……どうしたの?」
彼女の幼い笑い声が、僕の様子を見た途端に疑問へと変わる。
当たり前だ。声が耳元で聞こえるくらい近くにいるのに、オペラグラス越しに話す人などいない。
メイは心配そうに――と言っても、僕の狭い視界では彼女の姿は至近距離以上に大きく見えて表情がよくわからないけど――僕に声をかけた。
「そんなにそのオペラグラスが気に入ったの? まさか、くっついて離れなくなっちゃったとかっ。わぁお。ガリレオの呪い!?」
素っ頓狂な叫び声を上げる彼女だが、僕は冷静に言う。
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