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そう…、と瑠哀はおざなりに返事した。 “霞月”など、 探せばよくある名前のはずだ。 まさか、 あの人に関係のある人ではないはずだ。 偶然だ、と何度も自分に言い聞かせていたが、 その名前が頭から離れない。 ―――霞月(かづき)朔也(さくや)。 ……サクヤ。 二年前、 瑠哀がフランスに旅行しに行った時に出会った人。 彼の友人に気に入られて、 瑠哀がフランスにいる間、 ずっと一緒に過ごした。 清廉な人柄で、優しくて、 人を包み込む暖かさを持った人だった。 好きになるとか、 考えもしていなかった。 ただ、気がついた時には、 押さえ切れないくらい 苦しく激しい感情が生まれていた。
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