ミチビキ

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 歩くこと数十分、2階建てのアパートに到着。1階にある扉の鍵をあけて自分の部屋に入る。  占い道具を玄関に置き、奥に進む。蒸し暑いので下着姿になり、小さな円状の木製の机の前に腰を下ろして今日の成果を確認する。 「えーと、今日は客が5人。」  今日の占いの結果を簡潔にノートにまとめる。  その後は紙袋の確認。中身はそこらのコンビニで買えるドラ焼きやカステラ、そして少し厚みがある茶色い封筒。中身は一万円札が16枚と千円札が14枚。思わず唾を飲み込んだのが自分でも分かる。お礼として大金を貰ったのは久々だ。 「それ頂戴。」 お金に驚きながら落ち着こうとしている俺の耳にどこからか子どものような声が聞こえる。空耳かと思ったが何度も聞こえてくる。不安になり周りを見渡すが、敷きっ放しの布団、とりあえず起動したノートパソコン、食器類を仕舞ってあるカラーボックス、いつも通りの一人暮らしの部屋である。 「寝るか。」  誰かいる気がすると思ってしまったのが馬鹿馬鹿しい。学業とバイトの合間に占い師をやっているためオカルトを信じていないわけじゃないが、少なくとも自分にはそういう事柄に関する能力は持ち合わせていない。きっと、今日はお礼のおじさんと会ったことにより意識が変なほうに高ぶっているのかもしれない。  寝る為に明かりを消すと、机の向かい側にぼんやりと光る何かがいた。思わず再び明かりをつけるが消灯と点灯を早く繰り返したためか明るさの強さが弱くなり、部屋を薄暗くする。  先程よりも光が落ち着いてはいるがぼんやりと何かがいる。それは子どものような大きさと輪郭をしており、顔は分からないがドラ焼きを指差しながら俺を見ているということははっきり分かる。そして 「これ頂戴」 と、ねだってきた。 「ほ、欲しかったらくれてやるよ。」  壁に背をつけながら座り込む。いきなり現れたコイツはなんなのだろうか。
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